UXリサーチで中核をなす「インサイト」。商品企画やマーケティングに従事されている方ならば、耳にすることは多いのではないでしょうか。この言葉が頻繁に使われる一方で、「ファインディング」という言葉と混同されているケースが見受けられます。製品やサービスを利用する人々の経験を深く理解し、それを製品開発や改善に活かすUXリサーチにおいて、「インサイト」と「ファインディング」の違いはなんなのでしょうか?
ファインディングとは?
リサーチを通して得られる事実や現象などの直接的な観察結果が、ファインディングです。これは、ユーザーの行動や好み、利用状況など、ユーザーが体験している「事実」に焦点を当てます。
インサイトとは?
インサイトは、ファインディングに基づく理解であり、ユーザーの動機、ニーズ、感情、価値観を解明することです。「なぜそうなるのか」という根本的な疑問に答えるため、リサーチの中でも深い洞察力が重要となります。
具体例:
例えば、家族で囲む食卓にレトルト食品を出す主婦/主夫を観察したとき、多くは具材を追加するといったひと手間かけていることが、ファインディングとして観察されたとします。ここで単純に「具材の追加」という行動をファインディングとして注目したアプローチをとると、本当のニーズを見逃す危険性があります。重要なのは、「なぜ」手間をかけるのかを理解することです。
この場合の真のインサイトは、ユーザーが家族に対して「バランスのいい料理を提供したい」「家事で手抜きをしていると思われたくない」というような願望があっての結果であるかもしれません。
この願望は、具材の量を増やすことではなく、料理に愛情を込めることができるような手段、または簡単にアレンジができるものを提供することで満たされるのです。
UXリサーチにおいては、このように表面的なファインディングを超えて、ユーザーの行動の背後にあるインサイトを探ることが重要です。それにより、ユーザーの真のニーズに基づいた、より有意義な製品開発やサービスの改善が可能となります。
インサイトを導き出すプロセス
UXリサーチの中心的な活動である「インサイトを導き出すプロセス」は、データの収集と分析、またそのデータの背後にある意味を広く深く理解することまでを含みます。以下に、具体的なステップを紹介します。
1. ファインディングの収集
インサイトを発見するためには、まず広範囲にわたるデータ収集、つまりファインディングが重要です。これには、定性的なデータ(インタビュー・観察・ユーザーテストのフィードバックなど)と定量的なデータ(アンケート調査の結果・使用状況のログデータなど)の両方が含まれます。多角的な視点からデータを収集することで、より豊富な情報に基づいて分析を行うことができます。
2. ファインディングの生成
収集したデータ(ファインディング)を詳細に分析することで、パターンや繰り返し発生する現象、そして予期しない特異点を特定します。これらのパターンや特異点は、ユーザーの行動や意見に関する重要な手がかりを提供し、深い洞察の出発点となります。
3. コンテキストと動機の理解
パターンや特異点が特定できたら、それらが発生するコンテキスト(状況や条件)を理解し、ユーザーの動機やニーズが何であるかを推測します。このステップは、ユーザーの行動背後にある「なぜ」に焦点を当て、その行動を促す基本的な動機や感情を探る「インサイト」の始まりです。
4. インサイトの生成
これまでの着実なステップをもとに、リサーチャーのクリエイティブな思考と論理的な推論を発揮させることで、具体的な「インサイト」の生成へと繋がります。ユーザーの真のニーズや問題点を明らかにするためのこのステップをもって、UXリサーチの成果をクライアントに提供することが可能となります。
まとめ
UXリサーチの分野でインサイトを導き出す過程では、表面的なデータを超えてユーザーの本質的なニーズや動機を深く理解することが重要です。
そのため、UXリサーチャーの経験、直感、そして倫理的な思考を持ち合わせることが、真のインサイトの発見には不可欠です。単なる情報の収集者ではなく、その情報の背後にある意味を読み解くことができる洞察力が、リサーチャーの重要なスキルとして求められます。
Uismは、深いユーザーインサイトを提供することに特化したUXリサーチ会社です。私たちは、多様な文化背景を持つ経験豊富なリサーチャーを擁しており、これによって幅広い視点からのデータ分析と洞察の生成が可能になります。また、国内の調査だけでなく、グローバルな視野を持って海外調査のインサイト提供の実績も積んできました。
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