アクセシビリティの設計
UX(ユーザーエクスペリエンス)やUD(ユニバーサルデザイン)を取り入れた製品やサービスは、昨今多く目にすることができます。同時に、UDを重視するあまりUXが手落ちになっていることもあるのではないでしょうか。「印象」は洗練されていて魅力的な製品・サービスでも、その内容を掘り下げてみると、実際に起こりうる多様な使用事例やユーザーが想定されていないことがあります。その中でも顕著な例として、障害を持つ人々のアクセシビリティが挙げられるでしょう。
現代、特にデジタル時代におけるアクセシビリティにおいて、問題発覚後にその都度対処・解決していくことに加え、まず初めにあらゆるユーザーを想定した設計をすることが、「ユーザーのためのUX/UD」という定義を成し得ます。この記事では、アクセシビリティの概要と、ビジネスの成功に繋がるアクセシビリティについて説明します。
アクセシビリティ(A11y)とは
アクセシビリティ(Accessibility はAからy までの間に11 文字が挟まれているため、A11yと呼ばれます。Ally ”アリー”と読むことも。)は、UX/UDの文脈において、障害のあるユーザーが、障害のないユーザーと同等のレベルで、製品やサービス、またはプラットフォームを見つけ、利用し、貢献し、楽しむことができる能力のことです。
米国の非営利教育研究開発組織であるCAST(Center for Applied Special Technology)によると、ユーザーが以下のことができる場合、そのコンテンツはアクセシブル、つまり利用しやすいものであるとみなされます。
- 同じ情報を得ることができる
- 同じインタラクションを行うことが出来る
- 同じサービスを楽しむことが出来る
日本では公共空間のユニバーサルデザインとして、視覚障害者のために歩道に点字ブロックを設けたり、歩行が不自由な人のために階段だけでなくエレベーターを設置することが一般的です。
デジタルの世界でも、物理的な世界と同様、もしくはそれ以上の配慮が必要になります。W3C(World Wide Web Consortium)によるウェブコンテンツ・アクセシビリティガイドライン(WCAG)では、ウェブコンテンツとデジタル技術を設計するための、以下の4大原則が定義されています。
1. Perceivable:知覚可能
コンテンツは、ユーザーが認知可能、発見可能なものでなければならない。これは、ウェブコンテンツは複数の伝達機能を備え、ユーザーは理解するために機能を選択できることを意味する。
例:テキストの代替(音声読み上げ対応、点字対応)、モバイルとパソコンの互換性、フォントサイズの拡大、日本語から英語への翻訳
2. Operable:操作可能
インターフェースは操作可能でなければならず、機動性や操作性が制限され、重要な部分が使えないようなことがあってはならない。
例:マウスによる操作に限定せず、キーボードによる操作や、音声入力などが可能
3. Understandable:理解可能
「知覚可能」と「操作可能」に深く関連し、ユーザーは、インターフェースやコンテンツにアクセスする方法や使用方法を理解できなければならない。
例:明確な説明、わかりやすいタイトルとラベル、多様なユーザーサポートのオプション、理解しやすいエラー通知
4. Robust:堅牢
堅牢なアクセシビリティとは、コンテンツとインターフェースが幅広いユーザーに提供され、アクセシビリティのための技術の進歩や、時間とともに変化するユーザーのアクセシビリティ・ニーズに対応できることを意味する。
例:コンテンツは、アクセシビリティに関する業界標準や法的要件のアップデートに常に対応している
1. Perceivable:知覚可能
コンテンツは、ユーザーが認知可能、発見可能なものでなければならない。これは、ウェブコンテンツは複数の伝達機能を備え、ユーザーは理解するために機能を選択できることを意味する。
例:テキストの代替(音声読み上げ対応、点字対応)、モバイルとパソコンの互換性、フォントサイズの拡大、日本語から英語への翻訳
2. Operable:操作可能
インターフェースは操作可能でなければならず、機動性や操作性が制限され、重要な部分が使えないようなことがあってはならない。
例:マウスによる操作に限定せず、キーボードによる操作や、音声入力などが可能
3. Understandable:理解可能
「知覚可能」と「操作可能」に深く関連し、ユーザーは、インターフェースやコンテンツにアクセスする方法や使用方法を理解できなければならない。
例:明確な説明、わかりやすいタイトルとラベル、多様なユーザーサポートのオプション、理解しやすいエラー通知
4. Robust:堅牢
堅牢なアクセシビリティとは、コンテンツとインターフェースが幅広いユーザーに提供され、アクセシビリティのための技術の進歩や、時間とともに変化するユーザーのアクセシビリティ・ニーズに対応できることを意味する。
例:コンテンツは、アクセシビリティに関する業界標準や法的要件のアップデートに常に対応している
アクセシビリティの重要性
コンテンツのアクセシビリティについて考慮することは、ユーザーと提供者の双方にとって多くのメリットがあります。障害のあるユーザーにとってアクセシブルであることは、交流や娯楽の選択肢が増え、自律や発展の意識向上に繋がります。これは、障害を持つ人々に対する障壁や偏見を減らすという、社会的な利益となります。
また電車やバスの中で、スマホでYouTubeなどの動画を視聴する際、ヘッドホンを使わない時は、音声を出さずに字幕を利用します。つまり、視覚障害を持つ人だけでなく、幅広く字幕機能のメリットが享受されていることがわかります。
このように、アクセシビリティは一部のユーザーのためだけの特別措置ではなく、多岐にわたるユーザーのための機能であることが明確な場合、ビジネス成功への糸口はより鮮明になります。
ビジネス面で、アクセシブルなコンテンツの提供は多くのメリットがある、ということは反対に、アクセシブルでないコンテンツはユーザー層の一部を排除し、ターゲット層を狭めていることを意味します。障害の有無に関係なくコンテンツを利用できる仕組みは、コアユーザーの拡張、そしてより広いマーケットの獲得へと繋がります。
アクセシビリティにおける日本の立ち位置
日本では障害者福祉やアクセシビリティガイドラインにおいて、欧米諸国に追いつくために目覚ましい進歩を遂げてきました。2010年には日本工業規格(JIS)がWCAGに準ずるように更新され、2013年には障害者差別解消法が制定されました。この記事の投稿後(2024年4月)には法改正という大きな進展が迫っており、日本企業に障害者対応が法的に義務化され、合理的配慮が求められます。
しかし、今もなおアクセシビリティに対して消極的な姿勢の企業があることも否めません。正式な苦情申し立てがない限り法的問題と見なされないため、アクセシブルな技術や施策の取り組みには二の足を踏みがちなのです。
さらに、日本はドイツやイギリスなどの諸外国と同様、高齢化社会という問題に直面しています。つまり、障害のある人だけでなく高齢者など包括的にアクセシブルな設計する必要があることを意味し、デジタルの世界でも同様、この対応は急務です。「必要に応じて」という悠長なアプローチでは、日本は国際企業に遅れを取りかねないだけではなく、諸外国のより厳しい法的基準により深刻な訴訟に直面する可能性も出てくるでしょう。
Uismはどのようなサポートができるのか?
私たちはUXリサーチ会社として、出来る限り多くの人々により良い体験を提供することを目指しています。そのために私たちは、以下のようなアクセシビリティに焦点を当てた調査を、クライアント企業とともに行います。
アクセシビリティ評価:
国際基準に基づくベンチマークテストを実施し、現状を確認するとともに、アクセシビリティを向上させるための具体的な改善案を提示します。
ユニバーサルデザイン・コンサルティング:
UIデザインの提案やコンテンツ戦略の立案など、アクセシビリティを考慮したデザインプロセスをサポートします。
A11yワークショップ:
クライアントの担当者にアクセシビリティに関する教育とトレーニングを提供し、アクセシビリティに配慮した設計と開発のベストプラクティスを共有します。
アクセシビリティ評価:
国際基準に基づくベンチマークテストを実施し、現状を確認するとともに、アクセシビリティを向上させるための具体的な改善案を提示します。
ユニバーサルデザイン・コンサルティング:
UIデザインの提案やコンテンツ戦略の立案など、アクセシビリティを考慮したデザインプロセスをサポートします。
A11yワークショップ:
クライアントの担当者にアクセシビリティに関する教育とトレーニングを提供し、アクセシビリティに配慮した設計と開発のベストプラクティスを共有します。
私たちのアクセシビリティに関するアドバイスと専門知識は、Uismを初め世界各国のUXリサーチ会社が加盟するReSight Globalとのネットワークにより、バックアップされています。このグローバルな視点を通じて、貴社の製品やサービスが日本だけではなく、グローバルな基準を満たすことを保証します。
最後に
UXリサーチの調査対象者の一部に障害のある人々を含め、幅広いニーズを正しく理解し検証することは重要です。とは言え、積極的にアクセシビリティに取り組むことは、簡単なことではありません。
Uismでは、インタビューやリサーチの豊富な経験、障害者を支援する機関や組織との繋がりを駆使し、貴社のコンテンツの検証や改善のお手伝いが可能です。そして、誰もがより良い体験に近づくために、クライアントのみではなく、障害のある人々、また支援組織とも常に理解と繋がりを深めていきたいと考えています。
私たちがUXの分野でどのような活動をしているのか、また、どのようにニーズを代弁できるのか、ご興味をお持ちいただければ幸いです。ぜひご遠慮なくお問い合わせください。