ラポール形成でインタビューを成功させるテクニックとは?

私たちモデレーターは、限られた時間内で対象者から有益な情報を引き出さなければなりません。そのためには、モデレーターと参加者の間に信頼関係を築き、深い洞察を得ることが求められます。しかし、初対面同士が顔を合わせる状況では、信頼関係の構築には専門的なスキルが必要となります。この記事では、インタビューにおける参加者との信頼関係を形成する「ラポール形成」に焦点を当て、インタビュー中に心がけるべき具体的なポイントをご紹介します。

ラポール形成とは?

ラポールとは、フランス語で「架け橋(Rapport)」を意味し、相手との間に信頼関係や親密な関係を築くことを指します。インタビューにおいては、モデレーターと参加者の間にラポールを形成することで、参加者がリラックスし、率直な意見や感想を述べやすくなります。信頼関係が築かれることで、インタビューの質が向上し、より正確で価値のあるデータを収集することができます。

ラポール形成は、相手との信頼関係を築くための心理学的なプロセスであり、モデレーターにとっては重要なスキルです。特に初対面の相手から本音を引き出すためには、いかに早くラポールを形成できるかが大きな鍵となります。

では、具体的にどのようにしてラポールを形成すればいいのでしょうか。次にラポールを形成するためのテクニックについて詳しくみていきましょう。

ラポールを形成するためのテクニック

インタビューの成功には、最初の接触が非常に重要です。以下は、インタビューの流れの中でラポールを形成するためのステップとテクニックを紹介します。

オープニングトーク(アイスブレイク

インタビューが始まる前、まずはオープニングトークを使って参加者の緊張をほぐします。軽い雑談を交え、参加者がリラックスできる雰囲気を作り出します。例えば、「駅から会場まで迷いませんでしたか?」「今日はお仕事終わりですか?」といったように、簡単な会話から始めると効果的です。

オンラインの場合・・・

オンラインインタビューでは、技術的な確認や、リモート環境に関する話題を取り入れてみましょう。「接続に問題はありませんか?」「背景が素敵ですね」といった話題から会話を始めると、オンラインならではの距離感を縮めることができます。

ペーシング

ペーシングとは、相手とコミュニケーションする際に「ペース」を合わせることで、安心感や親近感を与えるスキルです。言葉の意味だけでなく、相手の表情姿勢仕草呼吸のリズム声のトーンなど、非言語的な情報も取り入れてラポールを形成します。実際には、視覚情報を合わせる「ミラーリング」や、聴覚情報を合わせる「マッチング」といった手法と組み合わせて使われることが多いです。

  • ミラーリング視覚情報を合わせる

相手の動きや言葉を鏡のように真似することで、親近感と信頼感を与えるテクニックです。例えば、参加者が「この人は自分に似ている」と感じ、心地よさを感じることができます。

  • マッチング(聴覚情報を合わせる

相手の言葉遣いやトーン、テンポ、ボリュームを合わせることで、共感と親近感を生み出す方法です。例えば、参加者がゆっくりと話す場合には、モデレーターも同じテンポで話すようにします。これにより、参加者がより話しやすいと感じる環境を作ることができます。

バックトラッキング

バックトラッキングとは、相手の発言内容を反復して繰り返すことで、コミュニケーションを円滑にするテクニックです。特にオンラインでのコミュニケーション時に有効で、相手の意見や感情を反復することで、共感と安心感を与えることができます。例えば、「そうですね、◯◯についておっしゃっていましたね」と反復することで、相手は自分の話が理解されていると感じます。ただし、反復する箇所やタイミングが適切でないと、逆効果になることがあるため注意が必要です。

肯定的なフィードバック

参加者の発言に対して適切な相槌や肯定の言葉を使い、話しやすい雰囲気を作ることができます。「ええ」「はい」「そうなんですね」といった自然な相槌を打つことで、参加者は安心して話を続けることができます。

これらのステップを通じて、インタビューの最初からラポールを形成し、参加者がリラックスして本音を話せる環境を作り出しましょう。

ラポール形成する際の注意点

ラポールを形成する際には、いくつかの注意点があります。

過度な共感NG

過度に共感を示すと、参加者が不自然に感じることがあります。自然な範囲で共感を示し、適度な距離感を保ちましょう。

沈黙を恐れない

質問を投げかけた後、参加者が答えるまで焦らず待つことが重要です。沈黙を恐れず、自然な間を取ることで、参加者は考えを整理し、深く考える時間を持つことができます。モデレーター自身もリラックスし、静かに待つ姿勢を見せることで、参加者が安心して話せる雰囲気を作りましょう。

バイアスの排除

モデレーター自身の意見や認知バイアス*を排除し、中立的な立場を維持します。インタビューを開始する前に、モデレーター自身の立場について明確に説明し、参加者の匿名性が守られることを伝えることで、参加者が安心して自分の意見を話しやすくなります。

*認知バイアスに関してはこちらの記事もご覧ください

文化的配慮

異なる文化背景を持つ参加者には、文化的な配慮を忘れずに行動しましょう。参加者の文化や背景を理解し、尊重する姿勢を示すことが大切です。

プライバシーの保護

参加者の個人情報を厳重に保護し、安心して話せる環境を提供します。インタビューの目的とデータの取り扱いについて明確に説明し、参加者が安心できるように努めましょう。

最後に

ラポール形成は、インタビューの質を高めるために欠かせない要素です。この記事では、インタビュー中に信頼関係を築くための具体的なポイントを紹介しました。これらのポイントを心がけることで、モデレーターは参加者との信頼関係を深め、より信頼性の高いデータを収集することができます。

私たちUismのリサーチャーは、豊富な専門知識と技術を駆使し、クライアント様に最高のサービスを提供するために日々努力を続けています。信頼性の高いUXリサーチを実現するため、常に最新の方法論を取り入れ、クライアント様のビジネスの成功に貢献することをお約束します。国内外を問わず、どのようなご相談でもお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

佐藤 愛衣 - Mei Satoh

佐藤 愛衣 Mei Satoh

宮城県出身。3人の兄弟と数十匹の猫たちに囲まれて育ち、兄の影響でミニ四駆にはまり、カーボン加工やボディの軽量化が得意な幼少期を過ごす。趣味は、夏はサーフィン、冬はスノーボード。また、どこへでも車で行くほどドライブ好きでアクティブなUXリサーチャー。これまで経験した業種はUismイチ(美容・アパレル・調剤・飲食・エンタメなど)。豊富な経験から、幅広い分野でのリサーチを強みにする。