各国における医療機器の認証とユーザビリティテストについて

はじめに

アメリカ市場でのFDA ( Food and Drug Administration / 米国食品医薬品局 )認証については、以前の記事でご紹介しました。

最近は、上述のFDA認証に関するご相談をいただく機会が増えてきました。医療機器をアメリカ市場に展開するにはFDA認証が必要ですが、では他の国や地域では、どのような認証が求められるのでしょうか?

本記事では、アメリカのFDA認証をはじめ、日本、EU、中国、インドなど各国・地域における医療機器の認証制度の違いを解説します。加えて、それぞれの認証において重要視されるヒューマンファクターエンジニアリング(HFE)やユーザビリティエンジニアリング(UE)の考え方についても紹介していきます。

FDA認証はアメリカ市場に製品を展開する際の認証です。この認証は、製品の安全性や有効性を保証するために必要なプロセスですが、市場が変われば認証の制度も変わります。たとえば、日本、EU、中国など、それぞれの地域で求められる認証機関や規制要件は異なります。(2025年3月時点)

それでは、各国や地域別の認証方法について、ご紹介します。

アメリカ

アメリカでのFDA認証は、他の国や地域よりもHFEの要求が厳しいとされています。

認証機関FDA
規制フレームワークQSR (Quality System Regulation /品質システム規制)
HFE (Human Factor Engineering / ヒューマンファクタ―エンジニアリング)
ISO 13485
市販後監視(PMS*)MDR(Medical Device Reporting) 報告、PMS調査、リコール管理
* PMS: Post-Market Surveillance / 市販後監視。医療機器が市場に出た後の安全性や有効性を継続的に評価し、必要に応じて改善を行うプロセス。

欧州

欧州では、CEマーキングを取得する必要があります。そのためには第三者認証機関による評価を受けるか、自己宣言をしなければなりません。

認証機関CEマーキング*
規制フレームワークMDR (Medical Device Regulation / 医療機器規則) ISO 13485
市販後監視(PMS)市販後調査、Vigilance System、PMS計画義務
*CEマーキング: EU(欧州連合)で販売される製品がEUの基準に適合していることを示す。認証機関はTÜV SÜD, BSI, DEKRAなど。

日本

日本では、 PMDA/厚生労働省の登録を受けた機関による第三者認証を受ける必要があります。

認証機関PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency / 医薬品医療機器総合機構)
MHLW(MHLW: Ministry of Health, Labour and Welfare / 厚生労働省)
規制フレームワーク薬機法
ISO 13485
市販後監視(PMS)安全性報告、リコール、適合性調査

中国

中国では、 NMPAの認証を受ける必要があります。中国国内での臨床試験が求められたり、多くの手続きや厳格な書類提出を求められたりするために、他の国や地域よりも認証に時間がかかることがある。

認証機関NMPA(National Medical Products Administration / 国家薬品監督管理局)
規制フレームワーク医療機器監督管理条例
ISO 13485
市販後監視(PMS)市販後データ報告、定期監査

インド

インドでは、 CDSCOの認証を受ける必要があります。

認証機関CDSCO( Central Drugs Standard Control Organization / 中央医薬品標準管理機構)
規制フレームワークISO 13485*
市販後監視(PMS)定期監査
* インド市場における医療機器のユーザビリティエンジニアリング(UE)に関する明確な規制要件は、現時点(2025年3月)では公表されていません。 しかし、IEC 62366-1:2015などの国際規格に準拠したユーザビリティエンジニアリングプロセスの導入が、製品の安全性と市場競争力を高めるために推奨されています。

認証におけるHFEやUEに関して、品質マネジメントシステムには ISO 13485が適用され、ユーザビリティエンジニアリングにはIEC 62366といった国際規格が適用されます。

上述の各国や地域の規制当局や認証機関のガイドラインとあわせて、対応する必要があります。

ISO 13485:2016
目的医療機器の品質マネジメントシステム(QMS)の構築・維持
関連プロセス設計・開発、リスクマネジメント、市販後監視(PMS)、是正処置(CAPA)
IEC 62366-1:2015
目的医療機器のユーザビリティエンジニアリング(UE)の適用
関連プロセスUI設計、ヒューマンファクター評価、形成的評価・総括的評価

この章では、認証に必要なユーザビリティエンジニアリングの中でもユーザビリティテストに焦点を当てて、紹介します。認証プロセスにおいて、「設計・実証」と「検証」ステージでユーザビリティテストが行われます。

「設計・実証」ステージ:形成的評価(Formative Evaluation

  • 開発段階での評価として、プロトタイプの使いやすさを検証する。
  • 少人数(5~10人程度)のユーザーを対象に実施する。
  • 問題点、改善点を洗い出し、設計変更を検討する。

「検証」ステージ:総括的評価(Summative Evaluation)

  • 認証機関に提出するための正式な評価として、最終製品に近いもの(形成的評価後に改善された製品)を使ったユーザビリティテストを実施する。
  • 15~20人程度のユーザーを対象に実施する。
  • 製品が安全に使用できることを証明する。

形成的評価と統括的評価で役割は異なりますが、評価の要件としては同様であり、国際規格 IEC 62366-1:2015 (JIS T 62366-1:2022)を満たす必要があります。下記が規格の重要ポイントになります。

規格を満たすユーザビリティテストの重要なポイント

  1. 実際の使用条件を代表する試験環境・使用条件の下で、選択したシナリオの一連のタスクを実行する。
  • 対象の医療機器が実際に使用される環境をシミュレーションする必要があります。想定される環境に合わせて、保護具やシンクや器具やワゴンなどを用意します。時には、機器の汚染をシミュレーションするために、血糊が必要になるかもしれません。
  1. 想定するユーザーグループのユーザープロファイルを代表するユーザーを用いて行う。
  • 評価の対象者は、対象の医療機器の使用をシミュレーションすることが出来る想定ユーザーである必要があります。それでなければ、実使用におけるエラーや問題点を把握することは困難でしょう。
  1. 評価における使用エラー及び使用の困難さを特定し、それが危険状態につながる場合には、根本原因を確定する。
  • このポイントが認証におけるユーザビリティテストの最重要点です。これは大きく2つに分解して、対応する必要があります。
  • タスクの達成度
    選択したシナリオ内で分解されたタスクに対して、ユーザーがタスクを達成できたかどうかを評価します。単純に達成できたか否かだけではなく、ヒヤリハットが起こったのか、及第点なのかといったことを評価する必要があります。
  • 根本原因分析(RCA: Root Cause Analysis)
    タスクに対して、ユーザーの使用エラーが発生した場合には、根本的な原因を発見し、問題を排除するために、再発防止や改善をする必要があります。

まとめ

このように、医療機器の認証において、市場が変われば、認証機関やガイドラインが異なります。随時、変更や更新が行われることもあるため、現地での情報確認や手続きが必要になります。

Uismは、ドイツに本社を置くグローバルUXリサーチグループReSight Globalの一員です。アメリカ、ドイツ、中国、インドをはじめとする主要拠点において、姉妹企業と緊密に連携しながら、医療機器分野でのHFE/UEリサーチや認証支援を数多く手がけています。各社ともにこの分野で豊富な知見と実績を有しており、Uismは以下のようなご支援が可能です。

1. 認証を見据えたユーザビリティ評価の設計・実施

  • FDA(アメリカ)、CEマーキング(欧州)、NMPA(中国)、CDSCO(インド)など主要市場の認証要件に準拠した評価設計を行います。
  • 形成的評価(Formative)から総括的評価(Summative)まで、開発フェーズに応じたテストを提案・実施します。
  • テストシナリオ作成、対象者募集、模擬環境の構築、報告書作成までワンストップで対応いたします。

2. アメリカ・欧州・中国・インド市場に対応したグローバルUX支援

  • ReSight Globalのネットワークを活かし、アメリカ・欧州・中国・インドにおける現地実査も可能です。
  • 各地域での規制要件や実務経験に基づいた、スムーズな申請準備とリスク低減をご支援します。
  • 多言語での調査設計・被験者対応・レポーティングにも対応しています。

3. 「いつ・何をすべきか」の判断から伴走します

  • 医療機器開発の早期段階から、「どのタイミングで評価を入れるべきか?」という計画フェーズからの伴走支援が可能です。
  • UXリサーチの視点から、設計改善の示唆出しや社内説明資料の作成支援も行っています。
  • 認証のためだけでなく、ユーザーの安全性と体験価値を高める実践的なHFE/UEの導入をサポートします。

医療機器の認証取得を目指している方はもちろん、「これから海外展開を見据えたい」「今のプロセスで不安がある」といった段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

相沢 直人 - Naoto Aizawa

相沢 直人 Naoto Aizawa

大学のゼミで「UX」と出会う。以後、修士課程にてUX・ユーザビリティ・UIデザインの研究を行う。修了後UXデザイン会社にて、キャリアをスタート。主に自動車HMI調査に従事し、2011年にHCD-Net認定人間中心設計専門家取得。Uターンをきっかけに地元北海道の広告代理店にてマーケットリサーチに従事するも、どうしてもUXリサーチに関わりたくUismに入社。現在は対面調査以外の時は札幌からリモートで勤務。

<参考サイト>

FDA Medical Devices  

Human Factors Guidance Document (2016)

PMDA 医療機器情報

厚労省 医療機器に関する薬機法情報  

EU Medical Device Regulation Portal

CDSCO Official Website

ISO 13485:2016 – 医療機器の品質マネジメントシステム

IEC 62366-1:2015 – 医療機器のユーザビリティエンジニアリング