HFES登壇レポート:アジアにおける医療機器HFE評価の実務上の違い 

HFES International Symposiumで行われたパネルトークの様子。演台に立つ司会者と、アジアにおける医療機器のHFE評価について議論する日本、中国、韓国の専門家たち。

記事の要約

  • アジアのHFE(ヒューマンファクターズエンジニアリング)評価では、規制だけでなく医療環境やリクルートなどの実行条件が結果に大きく影響し、特に日本では調査を成立させるための運用設計が重要となる。
  • 文化的背景がフィードバックの出方やエラーの捉え方に影響するため、モデレーションの仕方を含めてデータ取得の方法を工夫する必要がある 

先日、HFES International Symposiumにて、アジアにおけるヒューマンファクター評価の実務上の違いについて、日本の視点を共有する立場でパネルトークする機会をいただきました。中国Xplus XのMaffee Wan氏、韓国Hankook ResearchのMinJae Kim氏とともに、各国におけるヒューマンファクター調査の計画から実行に至るまで(海外データの活用方法、サンプル数、テスト環境、倫理審査、リクルートなど)について幅広く議論が行われました。 

これらの議論から、各国の規制だけでなく、医療環境や文化的背景がHFE評価に与える影響の大きさが改めて浮き彫りになりました。 

本記事では、その背景にある実務上の違いを、医療機器開発における重要な観点から整理します。後半では、各国の違いをまとめた資料もご案内しています。 

1. 制度より“医療の仕組み”が効いている 

各国の違いを生んでいる要因として大きいのは、規制そのものよりも医療環境や運用の仕組みです。 

例えば日本では、以下のような特徴が見られます。

白衣を着た医師が、机を挟んでHFE評価の説明を受けている。腕を組んで話を聞く姿は、文化的背景によってフィードバックの出方が異なることや、日本の医療従事者への調査における丁寧なモデレーションの重要性を示唆している。
  • 医療従事者への謝礼が副収入扱いとなり、施設側の承認が必要になる場合がある 
  • 医療従事者のスケジュール調整が実査直前まで確定しないなど、調整の不確実性が高い 
  • 患者リクルートが医師との関係性を起点に進むケースが多い 

また、調査環境の面でも、 

人影のない病院のナースステーションと廊下。医療カートやストレッチャーが置かれている。アジアにおける医療機器のHFE(ヒューマンファクターズエンジニアリング)評価では、このような調査環境の確保や医療機関との調整が重要となることを象徴している。
  • 外部調査を受け入れない病院も多い  
  • 専用のユーザビリティ施設の数が限られている  

といった制約があります。こうした環境のもとでは、患者・医療従事者ともに、調査参加に際して施設側の許可が前提となるケースがあります。特に患者については、安心感の観点から担当医を介して参加可否を判断する、あるいは医師から紹介される形でリクルートが進むこともあります。 

この背景には、日本において医療調査が欧米ほど一般化されていないことも影響していると考えられます。施設側・参加者双方にとって調査参加の心理的ハードルが相対的に高く、結果として慎重な意思決定プロセスが求められる傾向があります。 

このように、日本では評価設計そのものに加え、調査を成立させるための運用設計や関係構築まで含めて設計することが、結果の質と実行可能性に大きく影響します。 

2. 文化がデータそのものに影響する 

もう一つ重要なのが、文化的背景がデータの質に直接影響する点です。東アジア圏においても、国ごとの文化やユーザー特性によって、参加者の反応やフィードバックの出方には違いが見られます。 

例えば韓国では、新しいテクノロジーへの受容性が高いユーザー (early adopter)が多く、医療機器の評価においても課題をデバイス起因の問題として捉え、明確に指摘する傾向が見られます。 

一方で日本では、同様の状況においても、問題をデバイスではなく自身の理解不足として解釈する傾向があります。さらに、調査参加者自身の施設で使用している機器に対してネガティブな意見を控えるといったケースも見られます。 

韓国 日本
技術への態度 新技術への受容性が高い 慎重・自己適応志向
問題の捉え方 デバイス起因として指摘 自身の理解不足と解釈
フィードバック 率直・明確 抑制的(特に自身の施設で使用している機器)

特に医療機器の総括的評価ではモデレーターの介入が制限されるため、エラーは設計の問題であることを明確に伝え、 発言しやすい環境を意図的に設計するなどの配慮が必要です。 

このように、HFE評価においては調査設計だけでなく、文化的前提を踏まえたモデレーション設計と実行が、データの信頼性を大きく左右します。 

こうした課題にどう対応するか 

アジアにおけるHFE評価では、規制要件への適合だけでなく、各国ごとの実行条件を踏まえた設計と運用が求められます。 

特に日本では、医療機関との調整や被験者リクルート、実査環境の確保に加え、文化的バイアスを考慮したモデレーションが、評価結果に影響しやすいです。そのため、HFE評価においては、評価設計と実行を分けて考えるのではなく、一体として設計することが重要になります。 

Uismでは、日本市場におけるPMDA申請を見据えたユーザビリティエンジニアリングファイル(UEF)の設計・実施からレポート作成までを一貫して支援しています。また、ReSight Globalのネットワークを通じて、FDAやEU MDRなど海外規制を見据えたHFE戦略の立案や、各国要件に対応した評価設計・実行にも対応しています。 

実務においては、例えば以下のような領域において支援を行っています。 

  • 日本特有の医療環境・リクルート課題への対応  
  • ローカライズを踏まえた評価設計  
  • 文化的バイアスを考慮したモデレーション  

アジア市場を含むグローバル展開に向けたHFE評価をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 

日本・中国・韓国のHFE/UEの違いと進め方|評価実施ガイド

中国・日本・韓国のHFEの違いを、実務レベルで一気に把握できる無料ガイドをご用意しました。各国でのリクルート、IRB対応、調査設計の違いを整理しており、グローバルでHFEを進める際の判断材料としてすぐに活用いただけます。中国・日本・韓国でのHFE実施に不安がある方、違いを効率よく把握したい方におすすめです。

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各国におけるリクルートや調整の実務上の違い 
IRBや調査環境に関する実態
文化的バイアスとその対応方法
評価設計・モデレーションの考え方の違い