【2026年版】各国における医療機器の認証とユーザビリティテストについて

記事の要約

  • 認証の複雑性: 医療機器の海外展開には、米・EU・中国など各市場特有の認証制度とHFE/UE要件の理解が必須となります。
  • 国際比較の視点: 主要5市場(米・EU・日・中・印)の規制の違いを、国際規格(IEC 62366)を軸に横断的に解説します。
  • テストの要諦: 認証で求められるユーザビリティテスト(形成的/総括的)の基本的な要件や根本原因分析(RCA)の手法がわかります。

アメリカ市場でのFDA ( Food and Drug Administration / 米国食品医薬品局 )認証については、以前の記事でご紹介しました。

最近は、上述のFDA認証に関するご相談をいただく機会が増えてきました。医療機器をアメリカ市場に展開するにはFDA認証が必要ですが、では他の国や地域では、どのような認証が求められるのでしょうか?

本記事では、アメリカのFDA認証をはじめ、日本、EU、中国、インドなど各国・地域における医療機器の認証制度の違いを解説します。加えて、それぞれの認証において重要視されるヒューマンファクターエンジニアリング(HFE)やユーザビリティエンジニアリング(UE)の考え方についても紹介していきます。

FDA認証はアメリカ市場に製品を展開する際の認証です。この認証は、製品の安全性や有効性を保証するために必要なプロセスですが、市場が変われば認証の制度も変わります。たとえば、日本、EU、中国など、それぞれの地域で求められる認証機関や規制要件は異なります。(2026年4月時点)

それでは、各国や地域別の認証方法について、ご紹介します。

🇺🇸 米国

アメリカでのFDA認証は、他の国や地域よりもHFEの要求が厳しいとされています。

認証機関
  • FDA
規制フレームワーク
  • QMSR(Quality Management System Regulation / 品質マネジメントシステム規制 
  • HFE (Human Factor Engineering / ヒューマンファクタ―エンジニアリング)
  • ISO 13485
市販後監視(PMS*)
  • MDR(Medical Device Reporting) 報告、PMS調査、リコール管理

* PMS: Post-Market Surveillance / 市販後監視。医療機器が市場に出た後の安全性や有効性を継続的に評価し、必要に応じて改善を行うプロセス。

🇪🇺 欧州

欧州では、CEマーキングを取得する必要があります。機器のリスククラスに応じた適合性評価手続きを行う必要があります。低リスクのクラスI機器(特定のものを除く)は製造業者の責任で自己宣言が可能ですが、クラスIIa、IIb、IIIの機器は通知機関(Notified Body)による審査が義務付けられています。 

認証機関
  • 通知機関(Notified Body)*
規制フレームワーク
  • MDR (EU) 2017/745
  • ISO 13485:2016(品質マネジメントシステム)
  • IEC 62366-1:2015(ユーザビリティ) 
市販後監視(PMS)
  • PMS計画、PMS報告書(クラスI)、PSUR(クラスIIa以上)、市販後臨床フォローアップ(PMCF)、ビジランス報告(深刻なインシデントの報告) 

*通知機関: TÜV SÜD, BSI, DEKRA などの通知機関(※Class I機器で通知機関の関与が不要な場合は製造業者による自己宣言)

🇯🇵 日本

日本では、 PMDA/厚生労働省の登録を受けた機関による第三者認証を受ける必要があります。

認証機関
  • PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency / 医薬品医療機器総合機構)
  • MHLW(MHLW: Ministry of Health, Labour and Welfare / 厚生労働省)
規制フレームワーク
  • 薬機法
  • ISO 13485
市販後監視(PMS)
  • 安全性報告、リコール、適合性調査

🇨🇳 中国

中国では、2024年10月より『医療機器ユーザビリティエンジニアリング登録審査ガイドライン』が施行されており、製品のリスクレベルに応じて『可用性工程研究報告(Usability Engineering Research Report)』などの詳細な資料提出が義務付けられています。中国特有のユーザー特性や使用シーンを考慮した評価が厳格に審査されます。

認証機関
  • NMPA(National Medical Products Administration / 国家薬品監督管理局)
規制フレームワーク
  • 医療機器監督管理条例
  • ISO 13485
市販後監視(PMS)
  • 市販後監視(PMS)、不良事象・リコールデータの可用性へのフィードバック(全ライフサイクル管理) 

*認証プロセスにおいて、NMPAが発行している「使用性ガイダンス(NMPA Usability Guidance)」への適合を確認する必要があります。 

🇮🇳 インド

インドでは、 CDSCOの認証を受ける必要があります。

認証機関
  • CDSCO( Central Drugs Standard Control Organization / 中央医薬品標準管理機構)
規制フレームワーク
  • Medical Devices Rules (MDR), 2017
市販後監視(PMS)
  • MvPI(インド医療機器監視プログラム)、PSUR(定期的安全性最新報告書)の提出 

*CDSCOは「2017年医療機器規則(MDR 2017)」に基づき規制を運用しています。ISO 13485は、この規則の中で製造業者が遵守すべきQMSの基準として採用されています。 

*インド市場における明確な規制要件は限定的ですが、2025年に発表された医療機器ソフトウェア(SaMD/SiMD)に関するドラフトガイドラインでは、IEC 62366-1(人間工学/ユーザビリティ)への準拠が明示的にリストアップされています。また、全医療機器に適用される必須原則においても、ユーザーが安全かつ効果的に操作できることが求められています。 

認証におけるHFEやUEに関して、品質マネジメントシステムには ISO 13485が適用され、ユーザビリティエンジニアリングにはIEC 62366といった国際規格が適用されます。上述の各国や地域の規制当局や認証機関のガイドラインとあわせて、対応する必要があります。

ISO 13485:2016

目的

医療機器の品質マネジメントシステム(QMS)の構築・維持

関連プロセス

  • 設計・開発リスクマネジメント
  • 市販後監視(PMS)
  • 是正処置(CAPA)

IEC 62366-1:2015/Amd 1:2020

目的

医療機器のユーザビリティエンジニアリング(UE)の適用

関連プロセス

  • UI設計
  • ヒューマンファクター評価
  • 形成的評価・総括的評価

この章では、認証に必要なユーザビリティエンジニアリングの中でもユーザビリティテストに焦点を当てて、紹介します。認証プロセスにおいて、「設計・実証」と「検証」ステージでユーザビリティテストが行われます。 

設計・実証ステージ

形成的評価(Formative Evaluation)

  • 設計開発プロセスの初期から中期段階において、反復的に実施する。プロトタイプを用いて設計上の課題を早期に特定し、ユーザーインターフェースを最適化することを目的とする。
  • 設計の改良に必要な情報を得るために適切な人数を柔軟に設定します。特定の最低人数は定められていません。
  • 問題点、改善点を洗い出し、設計変更を検討する。  

検証ステージ

総括的評価(Summative Evaluation)

  • 最終デザインを用い、クリティカルタスク(誤操作が深刻な危害につながるタスク)において、設計されたリスク低減策が有効であることを証明します。 
  • 1つのユーザーグループにつき、最低15人の参加者が必要です。 
  • 製品が安全に使用できることを証明する。   

形成的評価と統括的評価で役割は異なりますが、評価の要件としては同様であり、国際規格 IEC 62366-1:2015 (JIS T 62366-1:2022)を満たす必要があります。下記が規格の重要ポイントになります。

規格を満たすユーザビリティテストの重要なポイント

① 実際の使用条件を代表する試験環境・使用条件の下で、選択したシナリオの一連のタスクを実行する。 

対象の医療機器が実際に使用される環境をシミュレーションする必要があります。想定される環境に合わせて、保護具やシンクや器具やワゴンなどを用意します。時には、機器の汚染をシミュレーションするために、血糊が必要になるかもしれません。 

② 想定するユーザーグループのユーザープロファイルを代表するユーザーを用いて行う。 

評価の対象者は、対象の医療機器の使用をシミュレーションすることが出来る想定ユーザーである必要があります。それでなければ、実使用におけるエラーや問題点を把握することは困難でしょう。

FDA申請を想定する場合、原則として米国在住者/米国の医療システムで働いている人を対象にする必要があります。

③ 評価における使用エラー及び使用の困難さを特定し、それが危険状態につながる場合には、根本原因を確定する。 

このポイントが認証におけるユーザビリティテストの最重要点です。これは大きく2つに分解して、対応する必要があります。

  • タスクの達成度:選択したシナリオ内で分解されたタスクに対して、ユーザーがタスクを達成できたかどうかを評価します。単純に達成できたか否かだけではなく、ヒヤリハットが起こったのか、及第点なのかといったことを評価する必要があります。
  • 根本原因分析(RCA: Root Cause Analysis):使用エラーだけでなく、「ヒヤリハット(Close Calls)」や「使用の困難さ」が観察された場合も、その根本原因をインタビュー等で調査し、評価する必要があります。

まとめ

このように、医療機器の認証において、市場が変われば、認証機関やガイドラインが異なります。随時、変更や更新が行われることもあるため、現地での情報確認や手続きが必要になります。

Uismは、ドイツに本社を置くグローバルUXリサーチグループReSight Globalの一員です。アメリカ、ドイツ、中国、インドをはじめとする主要拠点において、姉妹企業と緊密に連携しながら、医療機器分野でのHFE/UEリサーチや認証支援を数多く手がけています。各社ともにこの分野で豊富な知見と実績を有しており、以下のようなご支援が可能です。

ご支援内容

認証を見据えたユーザビリティ評価の設計・実施

  • FDA(アメリカ)、CEマーキング(欧州)、NMPA(中国)、CDSCO(インド)など主要市場の認証要件に準拠した評価設計を行います。
  • 形成的評価(Formative)から総括的評価(Summative)まで、開発フェーズに応じたテストを提案・実施します。
  • テストシナリオ作成、対象者募集、模擬環境の構築、報告書作成までワンストップで対応いたします。

アメリカ・欧州・中国・インド市場に対応したグローバルUX支援

  • ReSight Globalのネットワークを活かし、アメリカ・欧州・中国・インドにおける現地実査も可能です。
  • 各地域での規制要件や実務経験に基づいた、スムーズな申請準備とリスク低減をご支援します。
  • 多言語での調査設計・被験者対応・レポーティングにも対応しています。

「いつ・何をすべきか」の判断から伴走します

  • 医療機器開発の早期段階から、「どのタイミングで評価を入れるべきか?」という計画フェーズからの伴走支援が可能です。
  • UXリサーチの視点から、設計改善の示唆出しや社内説明資料の作成支援も行っています。
  • 認証のためだけでなく、ユーザーの安全性と体験価値を高める実践的なHFE/UEの導入をサポートします。

医療機器の認証取得を目指している方はもちろん、「これから海外展開を見据えたい」「今のプロセスで不安がある」といった段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。

Human Factors Research

医療機器UX・安全性評価

医療:医療機器・SaMD領域におけるUismの支援内容については、サービスページをご覧ください。

<各社の認証関連のページやブログへのリンク>

  • Bold Insight — Medical device research
  • Uintent — Human Factors / Usability Engineering and Medical Device Research
  • XplusX — Infusion Pump Human Factors Summative Evaluation
  • PeepalDesign — Healthcare UX: The Intersection of Design and Empathy

<参考サイト>

  • FDA Medical Devices  
  • Human Factors Guidance Document (2016)
  • PMDA 医療機器情報
  • 厚労省 医療機器に関する薬機法情報  
  • EU Medical Device Regulation Portal
  • CDSCO Official Website
  • ISO 13485:2016 – 医療機器の品質マネジメントシステム
  • IEC 62366-1:2015 – 医療機器のユーザビリティエンジニアリング