好意度は高いのに、なぜ動かないのか? マーケティング施策にUXリサーチが必要な理由 

カラフルな棒グラフを前に、少し離れた場所から見つめる人物。高い評価が必ずしも行動につながらない状況を表している

記事の要約

  • アンケートで好意度や理解度が高くても、実際の購入や利用につながらないことは少なくありません。 
  • その背景には、評価の低さではなく、ユーザーの生活文脈の中で価値が十分に立ち上がっていないという問題があります。 
  • だからこそ、マーケティング施策を考えるうえでは、「どの案が強いか」を見るだけでなく、「なぜそう受け取られたのか」を理解することが重要です。

アンケート結果は良好だった。好意度も高く、コンセプトの理解度にも大きな問題はない。社内でも手応えがあり、施策として前に進める判断がなされた。それにもかかわらず、実際に出してみると反応が伸びない。 

マーケティングの現場では、こうしたことが珍しくありません。 

数値上の評価は揃っているのに、ユーザーが動かない。このとき不足しているのは、データの量ではなく、解釈の精度です。ユーザーがその情報をどう受け取り、自分の生活の中でどのように意味づけているのか。その背景にある文脈が見えていないままでは、どれだけポジショニングやメッセージを磨いても、施策がうまく機能しないことがあります。 

以前の記事「「40代女性」だけじゃ、ユーザーの本音は見えない ― マーケットリサーチとUXリサーチの違いをジョブ理論で紐解く ―」でも詳しく解説しましたが、ユーザーは年代性別といった属性で動くのではなく、自分の生活を少しでも前に進めるための「ジョブ(片付けたい用事)」を解決するために製品を手に取ります。 

この視点で見ると、「好意度が高いのに動かない」という現象も、少し違って見えてきます。 

「測ること」と「解き明かすこと」の違い 

マーケティング施策を考えるうえでは、どの案が相対的に強いかを把握することも、その背景を理解することも、どちらも欠かせません。両者の違いを大まかに整理すると、次のようになります。 

視点 一般的なマーケットリサーチ(評価)  UXリサーチ(解釈 
主な問い 「どれが良いか?」 「なぜそう感じるのか?」
得られるもの 期待値・ランキング・スコア 背景・文脈・行動の障壁
実務への貢献 意思決定の「根拠」になる 施策の「精度」を上げる

どちらが良い悪いではなく、「数値はどの案が強いかを教えてくれるが、UXリサーチはその評価がなぜ生まれたのかを教えてくれる」という役割の違いを理解することが重要です。 

ケース①:評価は高いが、自分ごと化されない 

あるプロジェクトでは、3つの広告コピー案を比較し、最も好意度の高い案を採用しました。 
しかしインタビューで深掘りすると、次のような声が聞かれました。 

「良いとは思うが、自分のことではない。」 
「安心感はあるが、今すぐ必要とは感じない。」 
「他社と大きな違いが分からない。」 

これは、評価そのものが低いわけではありません。ただ、そのメッセージが生活の中での必要性や切実さと結びついていない状態です。良い印象は持たれていても、自分が行動する理由にはなっていない。ここで見るべきなのは順位ではなく、なぜその言葉が自分の話として受け取られなかったのかという点です。 

たとえば、次のような観点です。 

  • そのメッセージは、誰のどんな状況を想起させているか  
  • 「良い」という評価が、生活の中での必要性につながっているか  
  • 競合や代替手段との違いが、ユーザー自身の言葉で説明できる状態になっているか 

ケース②:理解されているのに、選ばれない 

別の新サービス開発では、機能の魅力も伝わっており、理解度も高い状態でした。それでも、「使ってみたい」という反応にはつながりませんでした。理由を探ると、問題は機能の不足ではなく、生活の中での位置づけにありました。 

「便利そうだけど、今のやり方でも困ってはいない。」 
「生活のどの場面で使うのか想像がつかない。」 

ユーザーは、広告やサービスを切り離して見ているわけではありません。すでに習慣になっているやり方があり、その中に新しいものを取り入れるには、それなりの理由が必要です。どれだけ価値が伝わっていても、使う場面が想像できない、あるいは乗り換える理由が弱いままでは、選ばれにくいのです。 

ここで確認すべきなのは、たとえば次のような点です。 

  • ユーザーはその価値を、どの生活場面で使うものとして理解しているか  
  • 今のやり方から変える理由が、本人の中で成立しているか  
  • 導入の手間や心理的な負担が、提示した価値を上回っていないか 

UXリサーチは「開発」だけのものではない 

機能設計とメッセージ設計は、別の仕事に見えるかもしれません。ただ、どちらもユーザーの意味づけの上に成り立っています。 

ユーザーはどう解釈するのか。 
どの文脈で価値を感じるのか。 
どこで違和感を抱くのか。 

こうした問いに向き合うUXリサーチは、プロダクト開発だけでなく、マーケティング施策の精度を高めるうえでも有効です。自分たちが想定している伝わり方と、ユーザーの実際の受け取り方のズレを捉えられれば、コミュニケーションの精度は大きく変わります。 

最後に:実務で確認したい3つのポイント 

好意度や理解度は悪くないのに、施策がうまく動かない。そんなときは、次の3点を見直してみると、課題の所在が見えやすくなります。 

  1. そのメッセージは、生活の中で「自分に関係あること」として受け取られているか  
  2. 価値は伝わっていても、今のやり方を変える理由まで成立しているか  
  3. 評価スコアだけで終わらせず、なぜそう受け取られたのかまで確認できているか  

ポジショニングに迷ったとき。メッセージが刺さらないと感じたとき。その違和感の正体は、データの不足ではなく、解釈の不足かもしれません。 

Uismでは、マーケティング施策の精度を高めるためのユーザー理解や文脈把握を支援しています。調査結果が実際の行動につながらない。ターゲットの受け取り方をもう少し深く理解したい。そうした課題があれば、お気軽にご相談ください。 

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